モセクシャ(仮題)

勝手言って入ってきた僕の部屋の住人が言う。
「いいから、ゆってないで買ってこいや」
僕は、わざと聞こえるように溜め息を吐き出し、靴を履いた…といってもサンダルのような足をスッと突っ込むだけの、なんというか靴然としたサンダル的。「ダルいぜ…(ボソッ)」だからヒモがあるような靴を俺のヒモの為に履くなんてことはしたくなかった。
コンビニまでの道のりはポッケに手入れフード被る暗い寒い…3時。横目に3本立ての映画館、もちろん昭和のピンク映画、のポスターの女優たち、格好はとても寒そうなんだけど熱い表情。こちらとしては、その顔でさらに超冷える。
「コンドーム。Lサイズ、ブ厚いヤツ」
右手で冗談のように「OKサイン」を形作りながら言った、小声だ。視慣れない女性店員、おそらく大学生くらいなのだろうが判別不可能、マツ毛盛り盛り、灰色のカラコンで、耳にはピアスが1万個くらいついてる。「…はぁ?」
「ソレ…それそれ、そこの棚の黄色いヤツ…『ビッグ&スィック』って書いてあ」
俺が言い終わらないうちに箱を袋に入れて無愛想に…「999円」なかなか素早いヤツ、ククク…などつまらないシャレを頭で呟いて1000円札を差し出す。
「お釣り1円になりまぁす…ありゃしたぁ~」
「1000マイナス999は1。よく出来ました」頭で言ったつもりが声に出していた。顔が下から上にブワッと紅潮する、熱い。しまった、さっきの言葉と同時に「1000円と1円じゃシャレが咄嗟に作れぬ」などと考えていたせいだ…あ、「せん」と「いち」の頭文字で「せい」だ。
「だからどうした~」と息を吐くように呟き、地面を視ながら小走りで店を出る。
酒で気分が高揚していた。家を出た時から「俺」様だった。後悔。もうあのコンビニには行けない。行きにも視たピンク映画ポスターの女優は冷却剤。「感謝」と思ったのも束の間、やはり外は冷える。
つづく
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